中小企業金融円滑化法に基づく貸付条件の変更等を受けていたことが取材で判明した企業倒産、「金融円滑化法利用後倒産」が9月に61件判明し、今年5月(60件)を超え月ベースとしては過去最多を記録した。
倒産要因をみると、返済条件の緩和措置を受けていても売上が回復せず、赤字体質から抜け出せないまま倒産に至った企業がその大半を占める。つまり、“実現可能性の高い抜本的な経営再建計画(実抜計画)”を策定し、それを実行していくことの重要性が叫ばれていたが、再建計画を実行することの難しさが倒産件数の増加という形で徐々に表面化してきたと言える。金融庁は「金融機関が、融資先に対し真に実効性のある経営再建計画の策定を支援しているか、そして進捗状況をフォローしているか」を重点的に確認するとしている。それでも、赤字体質の企業が経営改善を遂げるのは容易ではないのが現状である。2013年度上半期の「金融円滑化法利用後倒産」を見ても302件判明している。前期(244件)を23.8%、前年同期(184件)を64.1%ともに大幅に上回っており、今後も増加傾向をたどることが想定される。
他方、2013年度上半期における全体の企業倒産は5320件で、前期を0.9%上回ったものの、前年同期を2.2%下回り、4年連続の前年同期比減少となった。復興需要や公共事業の増加、消費税増税を見越した住宅の駆け込み需要を背景に、資金繰りが改善している建設業の倒産が前年同期比2ケタ減少となったことが大きい。また、金融円滑化法が適用期限をむかえてから半年が経過しているが、「金融機関が引き続き円滑な資金供給や貸付条件の変更等に努めるべきということは、今後も何ら変わらない」という金融庁の方針通り、金融機関における貸付条件の変更等は期限到来後も実行されている。返済条件の変更等を受けている企業の一部が「金融円滑化法利用後倒産」として表面化していているとは言え、この金融機関の対応が、資金繰りが厳しい多くの中小零細企業の資金繰り破綻を回避させていることも倒産が減少した要因である。
しかし、金融機関から継続的な支援を受けたとしても、「金融円滑化法利用後倒産」が増加しているように、再建計画が実行できずに破綻する企業や、計画が立てられずに返済を止めていたあげく破綻する企業などが散見される。加えて、原燃料・材料価格高騰や消費税率引き上げに際し価格転嫁問題を抱えるなか、どれだけの企業が再建を果たすことができるだろうか。2013年度下半期も倒産増加懸念が払拭できない状況は続く。