人材開発コラム

ヒトって本当に変わることができるの?

「人間、ハタチを超えたら変わらない・・・」
「原付のエンジンでは、高速道路は走れない・・・」

ヒトは変われるのでしょうか。ヒトは行動を変えることができるのでしょうか。
人材育成の一つのゴールに行動変容というものがあります。行動変容は色々な定義がありますが、一般的には、現在あるべき姿(求められてる姿)に近づくために不適切な行動習慣を適切な行動習慣に変えるという定義です。人材育成でなくとも、ヘビースモーカーやアルコール依存症の治療の場面でも出てきます。
人材育成のために実施する“研修”では、気づきを得ることはもちろんのこと、その気づきが行動変容につながることが理想であると言われています。

こうした行動変容の背景にある理論は、「行動変容ステージ理論」です。「行動変容ステージ理論」は、学習心理学の一つである行動分析学によって明らかにされた多くの理論を統合して提唱されたものです。
この理論では、「対象者の関心の程度や実行の状況に応じて5つのステージに分類できること」と「分類されたステージによって効果的な変容プロセスがあること」という2つの考えが特徴的です。

第1ステージ:前熟考期「課題が明確になっておらず、新しい取り組みに対して無関心」
第2ステージ:熟考期「課題を一応認識し、どのような課題に向かうか考える」
第3ステージ:準備期「課題を明確にし、その課題解決のための準備を行う」
第4ステージ:実行期「課題に対して、6か月程度実際に行動を変えて取り組む」
第5ステージ:維持期「実行期で実践した行動が定着するように意識して、さらに行動する」
この行動変容を促す具体的な手段としては、“習慣化”がポイントとなってきます。習慣化を支援する方法は、3つです。

心理的な行動療法:催眠療法など
人材開発技法:コーチングなど
組織開発手法:オープンスペーステクノロジーなど

習慣化を周囲が支援することにより、行動変容が起こるかもしれません。人間、二十歳を超えてからも変わることができるかもしれません。まずは、課題に気づき、課題解決のための行動を習慣化していきましょう。たしかに、これでレベルアップする人もいますね。

経営コンサルタント。企業分析をもとに、採用・育成などの人材戦略を手掛けている。2000社を超える取材・インタビュー経験を有し、現在は約100のクライアント企業を抱える。経営者、人事担当役員・責任者から生の声を得ながら、「エコノミスト」「ダイヤモンド」等の週刊誌、「Wedge」「選択」等の月刊誌に幅広く執筆中。

経験学習

■経験学習とは、知識伝達などによる研修やトレーニングとは異なり、実際に経験したことから学びを得る学習方法である。

■ロンバルトとアイチンガーは、人が有益な能力を身につける際、70%を仕事の経験、20%を他社からの助言、10%を研修から学ぶことを明らかにして、経験学習の重要性を示唆した。

■経験したことをより効果的に学びへと転換する仕組みとして、コルブは経験学習モデルを提唱した。

■経験学習モデル
1.具体的経験
・学習者の能力よりも一段階レベルの高い業務、または未経験の業務の機会を与える。
・例えば、プロジェクトチームへの参画、新規事業の立ち上げ、チームリーダーの経験。

2.内省的観察
・具体的経験を多面的に振り返る。
・具体的に体験したことを書き出す、または対話することにより抽出する。
・さまざまな視点から振り返る。

3.抽象的概念化
・気付きをもとに、次回の具体的な行動として何をすればよいか明確にする。
・振り返った経験を元に教訓やルール、ノウハウを形にしていく。

4.能動的実験
・抽象的概念化で得られた学びを、実践の場で試してみる。

■経験学習モデルをベースに従業員が経験から学ぶ仕組み
意図的に経験を積ませる。
・内省的観察と抽象的概念化の機会を作る。
さまざまな視点で振り返る。
・自身の経験を詳細に書き出す。
・学習者が集まり、お互いに経験したことを発表し合い、意見交換をする。

経営コンサルタント。企業分析をもとに、採用・育成などの人材戦略を手掛けている。2000社を超える取材・インタビュー経験を有し、現在は約100のクライアント企業を抱える。経営者、人事担当役員・責任者から生の声を得ながら、「エコノミスト」「ダイヤモンド」等の週刊誌、「Wedge」「選択」等の月刊誌に幅広く執筆中。

成人教育(アンドラゴジー)

■ペタゴジーとは、社会の一員としての素養を身につけるために、主に学校教育によって実施される子供に対する教育のこと。

■アンドラゴジーとは、生涯教育就業者の能力開発などの成人に対する教育のこと。

 

アンドラゴジー6つの要素

1.知る必要性
・成人の学習者は、何を学ぶのかなぜ学ぶのかについて知る必要がある。
・学習者が学習の必要性を自覚できるように、導入時に提示することが求められる。

2.自己決定性の増大
何をどうするかを自身で決定したうえで行動する。
自己決定的な姿勢を尊重し、研修を進める必要がある。
・学生時代に身についた受け身で学ぶ習性が戻らないようにする。
受け身依存的な学習者にならないようにする。

3.学習資源としての経験
・成人の経験の蓄積は、学習資源となり得る。
・経験ゆえに、固定された思考パターンバイアスを持つと経験がマイナスに働く。

4.学習へのレディネス(学習準備性)
・成人は、現実の生活における課題よりうまく対処する必要がある時に学ぼうとする。
普遍的な人の発達段階組織や個人特有の移行期などを考慮し、研修のタイミングを検討する。

5.学習への方向づけ
・成人は、学んだ知識活用応用したいと望む傾向にある。
業務に沿ったテーマ学習者が抱える課題に合わせたテーマを設定すると良い。

6.学習の動機付け
・昇進や昇給の外発的な動機は学びの促進材料となりえる。
・さらに有力な動機付けは内発的動機である。
・仕事への満足感達成感につながるようなカリキュラムは、学びが自身の利益につながること実感できるので有効。

経営コンサルタント。企業分析をもとに、採用・育成などの人材戦略を手掛けている。2000社を超える取材・インタビュー経験を有し、現在は約100のクライアント企業を抱える。経営者、人事担当役員・責任者から生の声を得ながら、「エコノミスト」「ダイヤモンド」等の週刊誌、「Wedge」「選択」等の月刊誌に幅広く執筆中。