新型コロナウイルス

「新型コロナウイルスに関するアンケート」調査

民間の信用調査会社東京商工リサーチによると4月の中小企業の「廃業検討率」は7.8%で、改善傾向にあった3月(6.7%)から1.1ポイント悪化した。新型コロナウイルス感染拡大で、4月23日にも東京、大阪、兵庫、京都の4都府県に3度目の緊急事態宣言の発令手続きが見込まれるが、「まん延防止等重点措置」が実施されるなかでも企業心理は大幅に冷え込んでいることがわかった。

今年3月の売上高がコロナ禍前(2019年3月)と比べ、「落ち込んだ」企業は66.8%に達する。宿泊業は、売上高が「半減以下」の企業は64.1%に達し、長引く旅行や出張の自粛、インバウンド消失の影響が経営を直撃している。
金融支援の副作用である「過剰債務」解消が中小企業の課題に浮上しているが、金融検査上、自己資本とみなされる「資本性劣後ローン」の金融機関からの提案は、大企業の6.7%、中小企業の17.5%が受けている。金融機関では、地方銀行や信用金庫が多かった。各地の地域金融機関が、コロナ禍に苦しむ中小企業の経営改善に積極的に取り組む姿が浮かび上がる。
4月15日に「事業再構築補助金」の申請受付が開始されたが、事業再構築を「実施、または検討」しているのは、大企業で39.8%、中小企業で44.3%だった。コロナ禍の先行きは不透明だが、多くの企業がポストコロナを見据えて進んでいる。

※2021年4月1日~12日にインターネットでアンケートを実施し、有効回答9,812社を集計、分析した。
資本金1億円以上を大企業、1億円未満や個人企業等を中小企業と定義した。

経営コンサルタント。企業分析をもとに、採用・育成などの人材戦略を手掛けている。2000社を超える取材・インタビュー経験を有し、現在は約100のクライアント企業を抱える。経営者、人事担当役員・責任者から生の声を得ながら、「エコノミスト」「ダイヤモンド」等の週刊誌、「Wedge」「選択」等の月刊誌に幅広く執筆中。

上場企業「新型コロナウイルス影響」調査 (4月29日時点)

民間の信用調査会社、東京商工リサーチによると、4月29日までに、新型コロナ関連の影響や対応などを情報開示した上場企業は1,929社に達した。これは全上場企業3,778社の51.0%と半数を超えた。業績の下方修正は、当初予想から売上高3兆1,416億円、最終利益2兆3,646億円が消失した。
2020年3月期の決算企業を中心に、決算発表の延期は399社(上場企業の10.5%)にのぼった。さらに、4月29日までに2020年3月期決算を163社が発表したが、このうち次期(2021年3月期)の業績予想を「未定」とした企業は約7割(66.8%)に達する。終息時期が見えない新型コロナの影響は世界に広がり、グローバル展開する上場企業の業績見通しは不透明感を深めている。

※本調査は、2020年1月23日から全上場企業の適時開示、HP上の「お知らせ」等を集計した。
※「影響はない」、「影響は軽微」など、業績に影響のない企業は除外した。また、「新型コロナウイルス」の字句記載はあっても、直接的な影響を受けていないことを開示したケースも除外した。前回発表は4月23日。

日産、三菱自、デンソーなど自動車関連が相次いで大幅下方修正、売上減少は3兆円超え

情報開示した1,929社のうち、決算短信や月次売上報告、業績予想の修正などで新型コロナウイルスによる業績の下振れ影響への言及は501社だった。このうち、359社が、売上高や利益の減少などの業績予想、従来予想と実績との差異などで業績を下方修正した。
また、新型コロナウイルスの影響が見通せず、従来の業績予想を一旦取り下げて、「未定」に修正した企業は40社にのぼった。
業績の下方修正分のマイナスを合算すると、売上高が3兆1,416億円、最終利益が2兆3,646億円に達した。「影響の懸念がある」、「影響を精査中」、「影響確定は困難で織り込んでいない」などの開示は633社だった。
売上高の下方修正額の合計は、前回発表(4月22日集計)時で2兆1,799億円だったが、わずか1週間で約1兆円が上乗せされ、3兆円を超えた。前回発表以降で、パナソニック(株)(TSR企業コード:570191092)が2020年3月期の売上予想を2,500億円引き下げ、全体で2番目の大幅な下方修正幅となった(利益は100億円の上方修正)。また、三菱自動車工業(株)(TSR企業コード:290569729、売上高▲1,800億円、利益▲310億円)や日産自動車(株)(TSR企業コード:350103569、利益▲1,600億円)、(株)デンソー(TSR企業コード:400026295、売上高▲1,100億円、利益▲1,570億円)など、自動車関連メーカーが相次いで大幅な業績下方修正を公表した。自動車関連の各メーカーは、世界的な減産の影響が続いており、日本の基幹産業でもあるすそ野の広い自動車産業のダメージが懸念される。

製造、サービス、小売の3業種で7割以上

新型コロナウイルスの影響を主な要因とした業績下方修正は、前回発表(4月22日集計)時で275社だったが、その後1週間で84社が新たに開示し359社に拡大した。 業種別では、製造業が最も多く146社(構成比40.6%)と4割を占めた。サプライチェーンの乱れや市場縮小などで業績予想に狂いが生じた。
次いで、サービス業68社(同18.9%)、小売業58社(同16.1%)と、個人消費関連の業種が続き、上位3業種で全体の75.6%を占めた。

3月期決算企業 次期の業績予想「未定」が6割以上

4月29日までに決算短信で2020年3月期決算を公表した上場企業(163社)の業績動向を、集計した。最多は「減収減益」の60社(構成比36.8%)。次いで、「増収増益」が同水準の57社(同34.9%)とほぼ並んだ。また、増収企業(82社)と減収企業(81社)、増益企業(78社)と減益企業(85社)も、ほぼ拮抗している。
一方、次期(2021年3月期)の業績予想は、163社のうち、108社(構成比66.2%)が「未定」として開示しなかった。現時点では、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う業績への影響について、合理的な算定が困難としている。国内外の感染拡大の終息の見込みを筆頭に、緊急事態宣言下での店舗・サービスの休業、国内消費の停滞、海外の生産体制や材料調達など、流動的な要素が多く、今期の業績見通しが立たない企業の苦境を浮き彫りにしている。
次期の業績予想を開示した企業55社では、最多は「減収減益」で、20社(構成比12.2%)あった。また、2020年3月期に続き、2期連続で「増収増益」を見込んでいるのは13社(同7.9%)で、全体の1割に満たなかった。

 

 

 

経営コンサルタント。企業分析をもとに、採用・育成などの人材戦略を手掛けている。2000社を超える取材・インタビュー経験を有し、現在は約100のクライアント企業を抱える。経営者、人事担当役員・責任者から生の声を得ながら、「エコノミスト」「ダイヤモンド」等の週刊誌、「Wedge」「選択」等の月刊誌に幅広く執筆中。

【2020年5月1日時点】「新型コロナウイルス」関連倒産状況

民間の信用調査会社、東京商工リサーチによると、5月1日、「新型コロナウイルス」関連の経営破たんが新たに5件(倒産3件、弁護士一任・準備中2件)が発生した。全国の累計は114件(倒産84件、弁護士一任・準備中30件)に達した。
「新型コロナ」関連の経営破たんは、2月2件、3月23件にとどまったが、4月は84件と急増し、5月に入っても1日に5件発生し、増勢を継続している。
都道府県別は、秋田県、群馬県、宮崎県で初の経営破たんが発生し、35都道府県に拡大した。最多は東京都の26件(倒産23件、準備中3件)。次いで、北海道11件(同11件、同ゼロ)、静岡県と大阪府が各7件、兵庫県6件、新潟県と愛知県が各5件と続く。

業種別では、宿泊業が26件(同18件、同8件)と突出。インバウンド消失と外出自粛で宿泊のキャンセルが最後の後押しになったケースが多い。次いで、外出自粛で売上が落ち込んだ飲食業が16件(同12件、同4件)、アパレル関連が10件(同5件、同5件)など、インバウンド需要依存の業種と個人消費関連の業種が際立っている。
このほか、自動車メーカーの操業休止の影響を受けて受注が減少した製造業、資材納入の遅れが影響した建設業、各地で営業自粛を求められているパチンコ店経営も2件発生、幅広い業種に広がっている。また、負債1,000万円未満の倒産が4月だけで57件(未確定)発生しているが、この中に新型コロナ関連の倒産も含まれていて、小・零細規模の実態は厳しくなっている。
新型コロナ感染拡大に伴い、緊急事態宣言の1カ月延長が検討されている。5月1日には業績が悪化した大手飲食チェーンが給与減額、夏のボーナス不支給を公表した。資金力の乏しい中小・零細企業ほど、外出自粛や休業要請が痛手になっており、補償と支援が急がれる。

※企業倒産は、負債1,000万円以上の私的整理、法的整理を対象に、集計している。
※北海道で負債が約700万円の倒産が発生しているが、同1,000万円未満のため未集計。
※原則として、「新型コロナ」関連破たんは担当弁護士、当事者から要因の言質が取れたものを集計。

「緊急事態宣言」延長により、中小の体力はさらに疲弊
経営破たんは2月2件、3月25件だったが、4月は89件と急増した。増勢は5月に入っても変わらず、5月1日は新たに経営破たんが5件判明し、2月からの累計は114件に達した。
4月27日の日銀の追加金融緩和策決定、30日の補正予算成立で、支援策の一歩が動き出した。だが、中小企業、小・零細企業・商店は、すでに2カ月に及ぶ外出自粛、休業要請で体力は限界に近づいている。緊急事態宣言の延長は、こうした企業・商店の経営をさらに疲弊させるだけでなく、大型連休のかき入れ時の機会損失も大きい。新型コロナの影響は、全国で幅広い業種に広がっており、今後は倒産に加え、先が見えない状況から「廃業」を選択する経営者が増える可能性も高まっている。

経営コンサルタント。企業分析をもとに、採用・育成などの人材戦略を手掛けている。2000社を超える取材・インタビュー経験を有し、現在は約100のクライアント企業を抱える。経営者、人事担当役員・責任者から生の声を得ながら、「エコノミスト」「ダイヤモンド」等の週刊誌、「Wedge」「選択」等の月刊誌に幅広く執筆中。