復興需要と地域経済活性化

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2013年上半期の企業倒産は5310件で、4年連続の前年同期比減少を記録した。しかし、地域別でみると、復興需要で2012年に倒産が減少していた東北はその反動で増加したほか、リーマン・ショック後、業況が悪化した製造業者や、大きく冷え込んだ個人消費の影響を受けた零細企業の倒産が相次いでいる中部が前年同期比6.6%増加となるなど、地域色が色濃く表れた。

そうしたなか、地域経済活性化、地域面的再生の主役とも言うべき、地方銀行64行の2012年度決算がまとまり、「国内主要113行の貸出金・不良債権実態調査」(帝国データバンク)で、地方銀行の貸出金(末残)は167兆3589億1800万円と、前年度を5兆3968億2500万円上回ったことが判明した。地方銀行協会によれば、地方公共団体向け、個人向け、法人向け、それぞれが前年度を上回っているという。

しかし、当然のことながら資金需要があるすべての企業に対し資金は行き届いていない。地方銀行の預貸率が、2009年度決算以降4年連続で減少しているという事実もある。団塊の世代の退職金などにより預金が順調に増加している一方で、新しい貸出先の選定や既存の貸出先へ追加・継続融資をするかに苦慮しているようだ。

もちろん、中小企業金融円滑化法の期限到来後も、金融庁等の指導により、金融機関は企業選別を積極的に進めている訳ではない。“5月の追加融資を断られ、資金繰りに行き詰まった企業”や、“6月末以降のリスケジュールを断られ法的整理入りした企業”が確認されている。多くの地域金融機関が、与信額等を基準とし重点支援先を決めて支援を実施しているなかで、重点支援先ではない企業への支援が手薄となっている可能性が高い。

2013年上半期の企業倒産は4年連続の前年同期比減少であった。しかし、四半期ベースでみると、2013年第2四半期(4~6月)は2762件で、前期(1~3月)の2548件を214件上回っている。中小企業金融円滑化法をはじめとする倒産抑制施策により、倒産件数は一進一退を繰り返しながら減少傾向を示していたが、第2四半期の件数をみると底打ち感が強まってきた。2013年下半期は、約40万社存在する返済猶予等を受けている企業のうち、金融機関が支え切れなくなる企業がこれまで以上に出てくるであろう。さらに、円安に伴う輸入価格上昇や原燃料高、労務費高騰などの影響を受けている企業が行き詰まると想定される。半期が終わった時点で、企業倒産は年間1万件を若干上回る水準で推移しているが、今後増加する可能性は高い。

経営コンサルタント。企業分析をもとに、採用・育成などの人材戦略を手掛けている。2000社を超える取材・インタビュー経験を有し、現在は約100のクライアント企業を抱える。経営者、人事担当役員・責任者から生の声を得ながら、「エコノミスト」「ダイヤモンド」等の週刊誌、「Wedge」「選択」等の月刊誌に幅広く執筆中。

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