消費税率引き上げの影響

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2013年3月末、中小企業金融円滑化法がその適用期限をむかえた。同法が施行された2009年12月から適用期限までに行われた貸付条件の変更等は、407万5064件(実行率93.3%)。資金繰りに苦しむ多くの中小零細企業の破綻を回避させ、倒産件数減少の一因となった。2009年には、月間1000件を超える水準で推移していた企業倒産件数だが、法施行後、一進一退を繰り返しながら減少し、2012年後半からは900件を挟んだ推移となっている。期限到来後も「金融機関は引き続き円滑な資金供給や貸付条件の変更等に努めるべき」という金融庁の方針通り、貸付条件変更等は実行されている。“アベノミクス”の高揚感も手伝って、企業倒産は抑制された状態が続いていると言えよう。

こうしたなか、今年4月、消費税率が引き上げられる。1997年4月に消費税率が引き上げられた際には、金融システム不安定期と重なったこともあり、消費マインドの低迷や駆け込み需要の反動減の影響から、小売業が大きな影響を受け倒産が増加した。消費増税が倒産に及ぼす影響は経済状況によって変化するため、一概には比較できないが、2013年の倒産件数が前年比増加している「家具・じゅう器・家庭用機械器具小売業」(124件、前年比11.7%増)や、食品小売業を含む「食品関連業者」(881件、同4.5%増)などは要注意である。また、2012年末から続く円安基調と、それに伴う原材料の輸入価格高騰の影響を受けている業種も多い。例えば、2013年に原料価格上昇などを背景として2度も主要製紙メーカーが値上げを行った「パルプ・紙・紙加工品製造業」の倒産件数は前年比24.0%の増加。また、燃料費高騰に苦しんでいる「道路貨物運送業」の倒産は292件発生し、前年(279件)と比べ4.7%の増加となっている。この原材料価格の高騰が未だ収束に向かう気配はなく、消費税率引き上げと相まって企業倒産増加要素となり得るであろう。

このように、大手企業を中心として業績回復が目立つなかでも、不安要素は山積している。2014年は、まず、いまだ経営課題を解決できていない中小零細企業が、抜本的に経営を改善できるか否かに注目したい。加えて、消費税率引き上げ、円安、原材料高といった外部要因への対応も大きなポイントとなる。また、今年は、中小零細企業の資金繰りを支えている金融機関の再編の動きが本格化する可能性があり、そうなれば貸出先精査に伴い淘汰される企業が出てくると想定される。2013年の企業倒産は1万332件とリーマン・ショック後最少を記録した。しかし、不安要素が払拭されなければ、2014年の企業倒産は、再び増加基調をたどる可能性が高い。

経営コンサルタント。企業分析をもとに、採用・育成などの人材戦略を手掛けている。2000社を超える取材・インタビュー経験を有し、現在は約100のクライアント企業を抱える。経営者、人事担当役員・責任者から生の声を得ながら、「エコノミスト」「ダイヤモンド」等の週刊誌、「Wedge」「選択」等の月刊誌に幅広く執筆中。

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